<コロンブスが見つけた”赤いコショウ”>
1492年8月、コロンブスはジパングの「黄金」とインドの「コショウ」を手に入れる目的で、スペインの港を出航して西へ西へと航行し、ついに西インド諸島を発見した。彼はここをインドと信じ、原住民をインディアンと呼び、また現地で目にした小粒の赤い色の辛い果実が原住民たちの利用の方法から、これがコショウであると思い込み自国へ持ち帰った。
当初は香りが乏しく、あまりにも辛味が強すぎたために、ただ鮮やかな赤色の果実が観賞用として栽培されたのに過ぎなかった。しかしながら、スペインやポルトガルでは、当時のヨーロッパの人々が好んだ風味と辛味のあるコショウは栽培できなかったけれども、辛いとうがらしは容易に栽培することが可能であったため次第にスパイスとして利用されるようになっていった。
こうして「とうがらし」は、わずか100年余りの間に世界中に伝播され、現在では世界の人々にとって欠かすことのできないほど利用されるようになって、人類の食生活に大きな影響を及ぼすに至ったのである。
<日本への伝来と原産地>
16世紀の中・後期にポルトガルによって長崎に伝来したと推測されている。中国へ渡ったのは日本よりもずっと遅く、明の末期1640年頃というのが有力説らしい。
とうがらしの原産地は中南米と考えられており、紀元前8000〜7000年にはペルーの中部山岳地帯で、紀元前7000年頃にはメキシコで栽培され、アヒイ(Aji)と呼ばれていたことが考古学的に明らかにされている。すなわち「とうがらし」はアメリカ大陸において最も古くから栽培利用されてきた作物の一つと見なされているものであった。
しかし、実際にスパイスとして広く多用されるようになった歴史は浅く、わずか400年ほどのことである。
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